安保法制懇の報告書要旨 发表时间:2014年05月14日 | 发表人:

    「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」報告書の要旨は以下の通り。

    我が国を取り巻く安全保障環境は、2008年6月の「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の報告書提出以降一層大きく変化した。このような情勢変化を踏まえて、安倍首相は、13年2月、本懇談会を再開し、我が国の平和と安全を維持するために、日米安全保障体制の最も効果的な運用を含めて、我が国は何をなすべきなのか、過去4年半の変化を念頭に置き、また将来にわたって見通しうる安全保障環境の変化にも留意して、その法的基盤について再度検討するよう指示した。

    【憲法解釈の変遷と根本原則】

    憲法第9条を巡る憲法解釈は、戦後一貫していたわけではない。政府の憲法解釈は、終戦直後には「自衛権の発動としての戦争も、また交戦権も抛棄(ほうき)した」としていたのを、1950年代には、「自衛のための抗争は放棄していない」とした。最高裁判所が、59年のいわゆる砂川事件大法廷判決において、「わが国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のことといわなければならない」という法律判断を示したことは特筆すべきである。70年代以降、政府は、憲法は自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置を採ることを禁じていないが、その措置は必要最小限度の範囲にとどまるべきであり、集団的自衛権の行使はその範囲を超えるものであって、憲法上許されない、との立場を示すに至り、政府の憲法解釈は、今日に至るまで変更されていない。

    国家の使命の最大のものは、国民の安全を守ることである。ある時点の特定の状況下で示された憲法論が固定化され、安全保障環境の大きな変化にかかわらず、その憲法論の下で安全保障政策が硬直化するようでは、憲法論のゆえに国民の安全が害されることになりかねない。我が国を取り巻く国際環境が厳しさを増している中で、将来にわたる軍事技術の変化を見通した上で、我が国が本当に必要最小限度の範囲として個別的自衛権だけで国民の生存を守り国家の存立を全うすることができるのか、という点についての論証はなされてこなかった。また、個別的自衛権と集団的自衛権を明確に切り分け、前者のみが憲法上許容されるという文理解釈上の根拠は何も示されていない。

    憲法前文は、平和的生存権を確認し、第13条は、国民の生命、自由及び幸福追求の権利について定めているが、これらを守るためには、我が国が侵略されず独立を維持していることが前提条件であり、外からの攻撃や脅迫を排除する適切な自衛力の保持と行使が不可欠である。基本的人権と同様の根本原則として理解されている国民主権原理の実現には主権者たる国民の生存の確保が前提であり、我が国の平和と安全が維持されその存立が確保されていなければならない。国権の行使を行う政府の憲法解釈が国民と国家の安全を危機に陥れるようなことがあってはならない。憲法前文及び第98条の国際協調主義の精神から、国際的な活動への参加は、我が国が最も積極的に取り組むべき分野と言わねばならない。我が国の平和主義は、同じく日本国憲法の根本原則である国際協調主義を前提として解されるべきである。

    【我が国を取り巻く安全保障環境の変化我が国として採るべき具体的行動の事例】

    我が国の外交安全保障防衛を巡る状況は大きく変化しており、予測が困難な事態も増えている。これまでは、事態の発生に応じて、憲法解釈の整理や新たな個別政策の展開を逐次図ってきたことは事実であるが、変化の規模と速度に鑑みれば、我が国の平和と安全を維持し、地域及び国際社会の平和と安定を実現していく上では、従来の憲法解釈では十分に対応できない状況に立ち至っている。

    我が国を取り巻く安全保障環境の変化に鑑みれば、2008年の報告書で示した4類型(公海における米艦の防護、米国に向かうかもしれない弾道ミサイルの迎撃、国際的な平和活動における武器使用、同じ国連PKO等に参加している他国の活動に対する後方支援)に加え、従来の憲法解釈や法制度では十分に対応することができない以下のような事例に際して我が国が具体的な行動を採ることを可能とする憲法解釈や法制度を考える必要がある。ただし、以下の事例のみを合憲可能とすべきとの趣旨ではない。

    事例1:我が国の近隣で有事の船舶の検査、米艦等への攻撃排除等

    事例2:米国が武力攻撃を受けた場合の対米支援

    事例3:我が国の船舶の航行に重大な影響を及ぼす海域(海峡等)における機雷の除去

    事例4:イラクのクウェート侵攻のような国際秩序の維持に重大な影響を及ぼす武力攻撃が発生した際の国連の決定に基づく活動への参加

    事例5:我が国領海で潜没航行する外国潜水艦が退去の要求に応じず、徘徊(はいかい)を継続する場合の対応

    事例6:海上保安庁等が速やかに対処することが困難な海域や離島等において、船舶や民間人に対し武装集団が不法行為を行う場合の対応

    【あるべき憲法解釈】

    1.憲法第9条第1項及び第2項

    憲法第9条は、自衛権や集団安全保障については何ら言及していない。憲法第9条第1項が我が国の武力による威嚇または武力の行使を例外なく禁止していると解釈するのは、不戦条約や国際連合憲章等の国際法の歴史的発展及び憲法制定の経緯から見ても、適切ではない。同項の規定は、我が国が当事国である国際紛争の解決のために武力による威嚇または武力の行使を行うことを禁止したものと解すべきであり、自衛のための武力の行使は禁じられておらず、また国連PKO等や集団安全保障措置への参加といった国際法上合法的な活動への憲法上の制約はないと解すべきである。国連PKO等における武器使用を、第9条第1項を理由に制限することは、国連の活動への参加に制約を課している点と、「武器の使用」を「武力の行使」と混同している点で、二重に適切でない。

    憲法第9条第2項は、第1項において、武力による威嚇や武力の行使を「国際紛争を解決する手段」として放棄すると定めたことを受け、「前項の目的を達成するため」に戦力を保持しないと定めたものである。従って、我が国が当事国である国際紛争を解決するための武力による威嚇や武力の行使に用いる戦力以外の、すなわち自衛やいわゆる国際貢献のための実力の保持は禁止されていないと解すべきである。

    国家は他の信頼できる国家と連携し、助け合うことによって、よりよく安全を守りうるのである。集団的自衛権の行使を可能とすることは、他の信頼できる国家との関係を強固にし、抑止力を高めることによって紛争の可能性を未然に減らすものである。

    「(自衛のための)措置は、必要最小限度の範囲にとどまるべき」であるというこれまでの政府の解釈に立ったとしても、その「必要最小限度」の中に個別的自衛権は含まれるが集団的自衛権は含まれないとしてきた政府の解釈は、「必要最小限度」について抽象的な法理だけで形式的に線を引こうとした点で適当ではない。「必要最小限度」の中に集団的自衛権の行使も含まれると解釈して、集団的自衛権の行使を認めるべきである。

    憲法第9条第2項にいう「戦力」については、「自衛のための必要最小限度の実力」の具体的な限度は防衛力整備を巡る国会論議の中で国民の支持を得つつ考えられるべきものとされている。客観的な国際情勢に照らして、憲法が許容する武力の行使に必要な実力の保持が許容されるという考え方は、今後も踏襲されるべきものと考える。「交戦権」については、自衛のための武力の行使は憲法の禁ずる交戦権とは「別の観念のもの」であるとの答弁がなされてきた。国策遂行手段としての戦争が国際連合憲章により一般的に禁止されている状況で、個別的及び集団的自衛権の行使や国連の集団安全保障措置等のように国際連合憲章を含む国際法に合致し、かつ、憲法の許容する武力の行使は、憲法第9条の禁止する交戦権の行使とは「別の観念のもの」と引き続き観念すべきものである。合法な武力行使であっても国際人道法規上の規制を受けることは当然である。

    2.憲法上認められる自衛権

    個別的自衛権については、自衛権発動の3要件を満たす限り行使に制限はないが、その実際の行使に当たっては、その必要性と均衡性を慎重かつ迅速に判断して、決定しなければならない。

    集団的自衛権については、我が国においては、我が国と密接な関係にある外国に対して武力攻撃が行われ、その事態が我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるときには、我が国が直接攻撃されていない場合でも、その国の明示の要請または同意を得て、必要最小限の実力を行使してこの攻撃の排除に参加し、国際の平和及び安全の維持回復に貢献することができることとすべきである。そのような場合に該当するかについては、我が国への直接攻撃に結びつく蓋然(がいぜん)性が高いか、日米同盟の信頼が著しく傷つき、その抑止力が大きく損なわれうるか、国際秩序そのものが大きく揺らぎうるか、国民の生命や権利が著しく害されるか、その他我が国への深刻な影響が及びうるかといった諸点を政府が総合的に勘案しつつ、責任を持って判断すべきである。集団的自衛権の実際の行使に当たって第三国の領域を通過する場合には、我が国の方針としてその国の同意を得るものとすべきである。集団的自衛権を行使するに当たっては、個別的自衛権を行使する場合と同様に、事前または事後に国会の承認を得る必要があるものとすべきである。我が国による集団的自衛権の行使については、内閣総理大臣の主導の下、国家安全保障会議の議をへるべきであり、内閣として閣議決定により意思決定する必要がある。この集団的自衛権は権利であって義務ではないため、政策的判断の結果、行使しないことがあるのは当然である。

    3.軍事的措置を伴う国連の集団安全保障措置への参加

    国連の集団安全保障措置は、我が国が当事国である国際紛争を解決する手段としての「武力の行使」には当たらず、憲法上の制約はないと解釈すべきである。集団安全保障措置への参加は、国際社会における責務でもあり、憲法が国際協調主義を根本原則とし、憲法第98条が国際法規の誠実な遵守(じゅんしゅ)を定めていることからも、我が国として主体的な判断を行うことを前提に、積極的に貢献すべきである。憲法前文で国際協調主義を掲げ、国連への協力を安全保障政策の柱の一つとしてきた我が国が、国連の集団安全保障措置であるにもかかわらず、軍事力を用いた強制措置を伴う場合については一切の協力を行うことができないという現状は改める必要がある。国連等が行う国際的な平和活動については憲法上制約がないとするとしても、平和活動への参加については、個々の場合について、政策上我が国が参加することにどれだけ意味があるのか等を総合的に検討して、慎重に判断すべきことは当然である。軍事力を用いた強制措置を伴う国連の集団安全保障措置に参加するに当たっては、事前または事後に国会の承認を得るものとすべきである。

    4.いわゆる「武力の行使との一体化」論

    いわゆる「武力の行使との一体化」論は、我が国特有の概念であり、国際法上も国内法上も実定法上に明文の根拠を持たず、最高裁判所による司法判断が行われたこともなく、国会の議論に応じて範囲が拡張され、安全保障上の実務に大きな支障を来してきた。「武力の行使との一体化」論は、憲法上の制約を意識して自衛隊による新たな活動について慎重を期すために厳しく考えたことから出てきた議論である。国際平和協力活動の経験を積んだ今日においてはその役割を終えたものであり、このような考えはもはやとらず、政策的妥当性の問題と位置付けるべきである。実際にどのような状況下でどのような後方支援を行うかは、内閣として慎重に検討し意思決定すべきものである。

    5.国連PKO等への協力と武器使用在外自国民の保護救出等国際治安協力

    国連PKOの実態との相違並びに国連PKOの任務及び活動主体の多様化を踏まえた上で、我が国のより積極的な国際平和協力を可能とするためには何が必要かとの観点から、いわゆるPKO参加5原則についても見直しを視野に入れ、検討する必要がある。政府は、これまで、国連PKO等におけるいわゆる駆け付け警護や妨害排除のための武器の使用に関しては、相手方が「国家または国家に準ずる組織」である場合には、憲法で禁じられた「武力の行使」に当たるおそれがあるので認められないとしてきた。しかし、国連PKOの国際基準で認められた武器使用が「武力の行使」に当たると解釈している国はどこにもなく、自衛隊が国連PKO等の一員として、駆け付け警護や妨害排除のために国際基準に従って行う武器使用は、憲法第9条の禁ずる武力の行使には当たらないと解すべきである。近年の複合型国連PKO等においては、治安維持や文民の保護等の業務が重要となっており、具体的検討に当たっては、駆け付け警護や妨害排除のための武器使用を可能にするとともに、法制度上、こうした業務も実施できるようにすべきである。

    国際法上、在外自国民の保護救出は、領域国の同意がある場合には、領域国の同意に基づく活動として許容される。在外自国民の保護救出の一環としての救出活動や妨害排除に際しての武器使用についても、領域国の同意がある場合には、そもそも「武力の行使」に当たらず、当該領域国の治安活動を補完代替するものにすぎないものであって、憲法上の制約はないと解すべきである。

    在外自国民の保護救出以外の活動であっても、領域国の同意に基づいて、同国の警察当局等が任務の一環として行うべき治安の回復維持のための活動の一部を補完的に行っているものと観念される活動や、普遍的な管轄権に基づいて海賊等に対処する活動、すなわち国際的な治安協力は、国際法上は、国連の集団安全保障措置ではなく、国際連合憲章第2条4で禁止されている「武力の行使」にも当たらない。このような活動についても、「武力の行使」に当たらず、憲法上の制約はないと解釈すべきである。

    6.武力攻撃に至らない侵害への対応

    現行の自衛隊法の規定では、平素の段階からそれぞれの行動や防衛出動に至る間において権限上の、あるいは時間的な隙間が生じうる可能性があり、結果として事態収拾が困難となるおそれがある。武力攻撃に至らない侵害への対応について、現代の国際社会では、その必要性が高まってきており、各種の事態に応じた均衡のとれた実力の行使も含む切れ目のない対応を可能とする法制度について、国際法上許容される範囲で、その中で充実させていく必要がある。

    【国内法制の在り方】

    以上述べたような考え方が実際に意味を持つためには、それに応じた国内法の整備等を行うことが不可欠である。まず、集団的自衛権の行使、軍事的措置を伴う国連の集団安全保障措置への参加、一層積極的な国連PKOへの貢献を憲法に従って可能とするように整備しなければならない。いかなる事態においても切れ目のない対応が確保されることと合わせ、文民統制の確保を含めた手続き面での適正さが十分に確保されると同時に、事態の態様に応じ手続きに軽重を設け、特に行動を迅速に命令すべき事態にも十分に対応できるようにする必要がある。このため、自衛隊法や武力攻撃事態対処法、周辺事態安全確保法、PKO法等について、各種特別措置法の規定ぶりや、現在の安全保障環境の実態、国連における標準に倣った所要に合わせ、広く検討しなければならない。

    【おわりに】

    憲法第9条の解釈は長年にわたる議論の積み重ねによって確立したものであって、その変更は許されず、変更する必要があるならば、憲法改正による必要があるという意見もある。しかし、本懇談会による憲法解釈の整理は、憲法の規定の文理解釈として導き出されるものである。

    そもそも憲法には個別的自衛権や集団的自衛権についての明文の規定はなく、個別的自衛権の行使についても、我が国政府は憲法改正ではなく憲法解釈を整理することによって、認められるとした経緯がある。

    こうした経緯に鑑みれば、必要最小限度の範囲の自衛権の行使には個別的自衛権に加えて集団的自衛権の行使が認められるという判断も、政府が適切な形で新しい解釈を明らかにすることによって可能であり、憲法改正が必要だという指摘は当たらない。また、国連の集団安全保障措置等への我が国の参加についても同様に、政府が適切な形で新しい解釈を明らかにすることによって可能である。

    政府が安全保障の法的基盤の再構築について、この提言をどのように踏まえ、どのような具体的な措置を採るのか、それは政府の判断に委ねられるのは言うまでもないが、懇談会としては、政府が本報告書を真剣に検討し、しかるべき立法措置に進まれることを強く期待するものである。

     


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